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電車はいつも空を走っている
地下鉄に乗る。床の上に、膝の欠けたこどもが横たわっている。
ウワ、見てはいけないものを見てしまった。
慌てて目をそらす。車内の他の人たちも、そのこどもを見ないようにしている。そしてそれに当て込むように、別のこどもが人々に絡んでまわる。頭に来たので、絡んでいるこどもに説教を垂れた。
が、誰も私の味方をしてくれない。私ひとりが車内で浮いている。
ナゼ?だってみんなこのガキに迷惑していたんじゃないの?
いたたまれない気持ちで、とにかくそのガキを道連れに、電車の止まった駅で降りる。
Read More... 駅員さんにガキを引き渡して、コイツはこんな悪童なのです。と言い訳、いや違う、説明をする。けれど駅員さんもガキに同情的。オレがまるで勘違いから暴走した困ったちゃんであるかのような顔をする。
それでもちゃんと話を聞いてくれた。
ホームのベンチに腰掛けて、オレの話したいように話させてくれて、それをちゃんと聞いてくれた。ベンチに腰を下ろして、隣でオレの話に頷くその人を見ているうちに、オヤこの人は、昨日も夢に出てきた知らない人だ。アイロン職人だったあの人だ。黒いガラスの仕切りの中で、蕎麦の手打ち実演のようにアイロンショーをしていたあの人だ。最後にそこから出てきて、土手の上で風に吹かれながらオレの頭をヨイコヨイコして撫でてくれたあの人だ。
アレ。何を求めていたのだろうか、自分は。
認めてほしかったのだろうか。
何に。
誰に?
知らない人だ。
それなのに。
我に返ると、電車に乗っていた。地下鉄ではなかった。
高い高いところを走る電車だった。下のほうに高層マンションが見えた。その間を縫って細く走る線路が見えた。線路に沿って植わっているたくさんの木々には花がついている。サルスベリのような、巨大なエリカのような、紫の花。その合間を埋める桜。美しかった。落ちなければいい。落ちないで、あそこまで降りて行ければいい。
ドアのガラスに頬を押しつけて、自分が落ちることばかり想像して怯えていた。
我に返ると、自転車を押して改札を通っていた。
駅の前の道路を、外国の人が運転する黒い車が乱暴に走っていく。
誰かを轢いて逃げていくのだろうな、と知った。
その轢かれた誰かが、私の知っている誰かなのだということも。
自然と知れた。
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2009.03.28.20:31 | by 架路 |
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