Jubilee

お兄さんは長男なので、ゆくゆくはその子も後を継ぐ。紋付きを着たばあちゃんやら、髭をたくわえたおっさんやらがずらっと正坐で横一列に並んだ膝の上を、赤ん坊が渡されていく。紋付きのばあちゃんが、その子のお尻をばしばし叩く。そして隣の髭のおじさんの膝に載せてやると、おじさんがまた赤ん坊を叩く。そのまた隣のねえさんの膝で、また叩く。そんな具合に叩いていくのが「儀式」であるらしい。

貴女も加わりますか？

と、高貴な人に促されるが、いやとんでもない、赤ん坊を叩くなんて。とオレが首を横に振る後ろで、いつからいたのか別の女の子が「私はやってみたい」と言って上がり込んでいく。その人の膝に載せられた赤ん坊を見てみると、赤ん坊の顔には、家の壁に描かれたのと同じような梅の花が咲いている。まるで陶磁器のような白い肌。そこに、浮き上がるように澄んだ梅の花。

ああ、高貴な血筋というのは生まれながらにしてこうも違う。

だから「私」はこの家にはお嫁に来られない。この人の背負っているものは重すぎる。
そう思って、その人との縁がふっつり切れたことを意識した。