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ゼロよりマシ。
チャトラの猫を連れて歯医者に行く。
いつもの椅子ではなく、手術台のような平坦なところに寝かされて麻酔を打たれる。天井を眺めていると、ところどころ漆喰が剥げ落ちていて、まるで空き家のようだ。
麻酔を打たれただけで、その後は誰も来ない。
猫はどこかへ連れていかれてしまった。
Read More... オレンジ色の電球に照らし出されたボロボロの天井を見ているうちに不安になって、やっぱり今日は帰ることにする。猫を探さなくちゃ、と思っていると、ハクアイさんが猫を連れてきてくれた。
チャトラは私が寝ている台の上に載せられて、満足そうに座っている。
のんきなものだ。私があんなに心配したことも知らないで。
少し憎たらしい。
ハクアイさんと一緒に家に帰る。
さっき出会ったばかりのような気もするけれど、それが普通であるように私の家に帰る。ハクアイさんはとても優しい。何を話しても微笑んで聞いてくれる。私の気に入らないことは言わないし、しない。
私がハクアイさんの皮膚の上についた緑色の小さな破片を間違えて取ってしまった時も、その時だけ少し微笑んだ顔が凍りついたけれども(そしてそれが初めて垣間見えた本音なのだ、ということも私にはわかったけれども)、私を咎めたりしなかった。許してくれた。
ハクアイさんにとってそれが「役目」なのだ。
薄く笑って私を傍に「居させて」くれることが、他のたくさんの人に対するのと同じように、「役目」なのだ。そういうことが徐々にわかり始めて、それでもひとりでいるよりは傍に「居させて」もらえるのならそのほうがいい。
ハクアイさんの薄い微笑みは、顔にはりついたように動かない。
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2009.01.03.20:07 | by 架路 |
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