Jubilee

しばらくしてまた襖がガタガタ揺れたので、思い切ってガラリと引いてみると、兄がいた。
兄は奥の部屋で寝ているはずである。だからこれは兄であるわけがない。けれど母はそれを兄だと信じ込んでいる。私にも兄に見える。外見は本当の兄と変わらないし、もしかすると兄よりも優しいかもしれない。

でも兄に化けている何かかもしれない。
今は優しいけれど、企みがあっての優しさなのかもしれない。

本当の兄に見せれば彼がニセモノだということがハッキリするので、その「兄のように見えるもの」を連れて寝ている兄を起こしに行く。兄はやはり其処で眠っていた。寝ているのを起こして、もう一人の兄と付き合わせ「これはアンタじゃないんでショ」と訊くと「先に起きていたオレかもしれない」と訳のわからないことを言う。二人ともお互いを見て驚きもせずに意気投合して仲良く話をしている。

なんだか虚しく疎外感。