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腹話術師
私は罪人なので、誰からも恨まれている。
外に出ればみんなが私を殺したがる。だからどこへ行くにも護衛が一緒についてくる。
私自身は、みんなにそんな風に恨まれることも、護衛がいなかったらすぐに殺されるかもしれないことも、格別何とも思っていない。ただ、いつも一人になれないのが鬱陶しい。
ある高級な洋館に行くと、階上の部屋へ通される。
その部屋へは護衛はついて入れない。ようやくそこで一人になれた。
Read More... その部屋には半円状に椅子が置いてある。そのうちの二つに初老の男性と少年が座っていて、彼らの膝の上には太った子どもが載っている。
椅子もテーブルも窓枠も、彼らの着ている服も一概に黒い。
部屋の壁だけが象牙色で、黒との対照をなしてそれがとてもあたたかで懐かしいように感じる。
少年は立ち上がって私を歓迎する辞を述べる。
初老の男性は何も言わないけれど、彼が同じように私に優しい立場であることがわかる。
少年が男性の膝の上の子どもを抱き上げて私に抱かせた。
妙に軽い。
けれど彼らも私によくなつく。
その子達は本当は腹話術の人形なんですよ、と少年が言う。
とても人形とは思えないほどによく喋るけれど、そう言われれば確かに表情が全く動かない。
この子達の言葉はあの初老の男性の言葉なのだ。だから男性はさっきから黙っているのだな、と合点がいく。
人形を持て余していると、やっぱり黒い服を着た頭の大きい女主人が部屋に入ってきた。
彼女に挨拶がてら自己紹介をしているうちに、どこで言葉を切ったものかわからなくなる。
うやむやにして適当なところで黙り込んでしまおうかと思うけれど、みんな一生懸命聴いているようなので途中で止めるわけにもいかず、困りながらも口は勝手に動いて早口で敬語と謙譲語を並べ立てている。
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2005.01.10.15:04 | by 架路 |
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