Jubilee

そのうちにシアワセさんが、今日はもう遅いので出発は明日に延期しましょう、と言った。
遅いと言ってもまだ正午を過ぎたくらいだというのに。
シアワセさんは朝が早い。

計画を乱されてシアワセさんが機嫌を損ねたということが、言葉にも態度にも出さないけれど空気で伝わってくる。気まずくなってテレビを見ていると、シアワセさんの郷里の人達が映っている。シアワセさんが帰ってくるので、みんな町をあげての大騒ぎをしているらしい。
テレビに映った女の人達が、私がシアワセさんに始終くっついていることを囂々と非難した。

嫉妬か。嫉妬だ。と、思いつつも女の人達の剣幕が怖ろしかったので、シアワセさんに「私は恨まれているようですね」と訊くと、

　全然そんなふうに思われるような間柄じゃあ、ないんですのにね

と。シアワセさんは、やんわりと言う。
その言葉で引導を渡されていながらも、私はシアワセさんの肩に自分の頬をあてたままでいる。シアワセさんも寛容なまま、私を其処に「居させて」くれている。
隣はとても心地が良い。くっついていると他の何もいらない。
否定されて尚、シアワセが満ちる。