2001 / 習作
雪幕
言葉を使わずに居たから私たちは傷もつかず、花も捧げず、
お別れさえうやむやのままで、始まりもわからず流れるだけ流れて、
お話の夜
本当に迎えに来てくださるのなら、星が見える。
来てくださらなかったら、火の粉の雨が降る。
吾気
私が決めて、決めた、その行為。
幸せの為ではなく、歓びの為ではなく、ただ生きるという為。
あくる
身体は麻痺し続けて、こころがくぐもる。
感覚を失っても、眼を開けていろ。
夢の海
頬が流れに、削がれて削がれて、痩せ細る。
どんなに必死に拭っても、浮かび上がる頬の傷。
こころぼっち
水銀の膜で、貴方の耳を塞いで、歌声が貴方の中を巡るよう。
氷よりもまだ冷えたこの恋を、さしあげる。
花が咲いたらば
連れて帰った残像はそっと、隠しておこう。
磨いて磨いて、硝子になったらば、叩き割る。
虹の子
貴方を縛り付けるものなど其処にはいない。
貴方を押さえ込む手は、届かない。
恋桜
生まれ自体がその恋は死の途の辿り方。
花片に桜の死に様を見よ。
直木三十五の考察
だけど俺だけじゃない、
ゲーテになれなかったのは俺だけじゃない、
よるのやま
あたしはニンゲンを喰らうんだ
眸がそう言った。恐ろしい色でそう言った。
あざらしの夜
海の底に横たえてその銃創の幾多の傷の
流れ出す血が海を夜に留めるのならば
僕が君の隣に
輪郭はぼろぼろのつぎはぎだろうとも、君と僕との二つさえ揃っていれば、
良いのだと思っていた。小さくとも。
恋ひしからざる
貴方、私のことを、ちゃんと好いていてくださいましたか。
私と同じほどに、疑問を胸に満たしたことが、おありでしたか。