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雪幕


 街灯が独り。
 照らし出されて青く堕ちるもの。
 言葉を語らずに堕ちるもの。
 決して独りのまま。
 身を寄せても独り。
 遠い高速の風の中に、一陣の記憶。

 言葉を使わずに居たから私たちは傷もつかず、花も捧げず、
 お別れさえうやむやのままで、始まりもわからず流れるだけ流れて、
 路を分かち、けれど決して背を合わせず、
 そうやって歩いていると思っていたのは私だけ。

 二度と貴方の鏡に映らない。

 雪の幕、夏の影、紅い残像。
 紅い光の尾。
 記憶の上に一条、血をひいた。

 円い演台。
 記憶の舞台。
 舞い降りる沈黙の、ひらり、ひらり、ひとつひとつ。
 舞い降りる沈黙の、穏やかにそれは、けれど狂気の片。
 言葉を語らずに、傷のつかなかった丸み。
 指も触れずにいた。
 癒すこともしなかった。

 私たちは、まだ始まりもしていない。

[2001/1/15 (Mon)]

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