こころぼっち
逢いたいと言ったらばすぐに逢える
そんな間柄では始めからなくて、
逢いたい
その言葉は始めから力を持たない。
空気に負けて、薄れて、消えてゆくだけ。
いつも離れ離れだったから、いつも一緒にいるよりは、慣れている。
一人ぼっちは怖くない。
一人ぼっちは平気だけれど、貴方も一人の時だけならば。
まず視線で撃ち抜いて、ごまかすために言葉で撃った。
ばっかやろう。
それなら最初から、約束なんてしなくて良かった。
指を一本動かすだけで、貴方は世界を破壊する。
月を沈めて、石が崩れて、花が散り、夜が永遠の、闇に呑まれた。
彼方から流れる童謡のような、遠い声。
心をかきさぐって、奪って、遠ざかる。
子供の頃には、疑うことなどしなかった。
あまりにも小さい、けれど唯一の信頼が消えていく。
一時の恋を裏切って貴方は、私から、不死の呪縛を手に入れる。
私は貴方を腕から放って自由にしましょう。
けれどかたく、刻みつけて、鎖で貫いてから。
墨に、どっぷりと浸して、呪詛を染め抜いて、血で貴方の瞳を覆う。
誰も、映さぬように。
水銀の膜で、貴方の耳を塞いで、歌声が貴方の中を巡るよう。
氷よりもまだ冷えたこの恋を、さしあげる。
春の惰気に触れぬよう。
貴方の肌が、侵されぬように。
水に放して、溺れたならば、私が貴方を葬りましょう。
すくいあげて、どれほど冷たくとも、
この世の別れは、決して別れに成り得ない。
ただ繰り返す探求があるのみで。
抜け出せたなら今度こそ、永遠に別れのない季節。
私たちは決して別れない。
[2001/1/27 (Sat)]
| 2001 / 習作 |