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あくる

 死んだ魚の歌をみる。
 月夜の独り。
 四月の夜の、独りきり。
 道の露草。
 腕のボトルを振り切って、声を拭おう。
 忘れよう。

 かちかち、耳に刻まれてくるくる、優しい眼。
 此処で遊ぼう。
 此処で踊ろう。
 痛いことなんてない。
 苦しいことなんてない。
 身体は麻痺し続けて、こころがくぐもる。
 感覚を失っても、眼を開けていろ。

 外に出て、遊ぼう。
 たまった煙を解き放って、忘れよう。

 忘れても何も変わらない。
 覚えていても、やっぱり変わらない。
 苦しいだけなら、忘れれば良い。
 あんな静かな激昂のこと。

 春の夜に独り。
 首にさがった蒼い石。
 月を溜め込み、私を呪い、今も離れない。
 こんなにも静かな、恋のあること。
 夢に遊ぶ。
 二度と眼を開けて、世界を見ない。

 瞳孔の彼方の夏の景色。

[2001/1/23 (Tue)]

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