花が咲いたらば
花が咲いたらば一緒に出かけよう。
そうして二度と、振り返らない。
ただ花が咲いたなら。
秋が来たらば貴方と手を取って、
くるくるくるくる、落ち葉の中を舞う。
そうして倒れ込む。
冬が怖いから。
雪が降ったとき、私たちは歌をうたう。
指先を赤くして寒さに凍えたら、恋をする。
樹氷で曲がった光の糸に、互いを見失う。
雪が降ったらば。
恋を失って、さまよい海を渡り、ひとり、冬に戻り、凍りつく。
想い出は氷に埋める。
鍵をして、雪で覆う。
連れて帰った残像はそっと、隠しておこう。
磨いて磨いて、硝子になったらば、叩き割る。
がしゃり、指の先。
すっぱり切れて、ひとしずく、紅く。
その血を冬に染み込ませ、雪がとけたら、春になる。
花が咲いたらば、肩を抱いて出かけよう。
右手にぐるぐる包帯を巻いて、出かけよう。
咲き誇る花は恋敵。
燧火を擦って火をつけて、ぼうぼう燃やす。
焼け野原。
生かせぬのなら、犠牲に替われ。
燃える花片のこぼしたひとつ。
[2001/1/29 (Mon)]
| 2001 / 習作 |