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悲惨じゃないか
やめておけよ、と思う一方でもう片方の自分はヤケになって、もう会いに行ってしまおうか、とも思う。メグミさんに。たぶんこれで最後だろうと思う、あの人の場所がわかるのは。会いに行けるのは。
自分の片方はもうかじりついて止めもしない。他人事のような顔をして呆れている。やめておけよ。悲惨じゃないかよ。こんなことで自棄になって。
せっかくここまで遠ざかった記憶に。
冷めた目でそう言う。
鏡に映して、存在を知る。
手取り足取り、それを論じる。
まるで今回はその逆を行って、アラタさんが私を鏡に映す。私の醜悪な部分を全てさらけ出す。そして一瞬で消えてしまった。私は自分の醜さに、立ち上がれない。
Read More... あの時に、走ろうか走るまいかをさんざん迷って自分を説き伏せて、走らずに何もかもを見送って、「これで良」かったと思ったのを忘れたのか。あのあと数ヶ月してそのときに初めて、本当にあれで「良」かったのだと思った。自分はどうかしていたと思った。少しずつ正常に戻りかけたところでまた何もかも抛り出して、あんなに時間をかけて抑え込んだものを解放してしまって、ほんとうにそれでいいのか。
良くはない。
けれどあの時、私の気は済んでいない。
今、もう一度人を傷つけるために刃を持って走り出して、あの人に斬りつけたらばそれで済むのか。
自分の肯定を取り戻したい為に、わざわざあの人に斬りつけに行くのか。
肯定。
なぜ私の中からごっそり抜けてしまったのだろう。ココロの隅に隠しこんでしまっていたのに、なぜ私の上をなぞるようにして視線滑らせただけでそれを暴き出して取り出して行ってしまったのだろう。奪われて初めてまるで私が、持つ権利すらもたない盗品のような何ものかを必死に抱え込んでいたような罪悪感に捕らわれるほどに堂々と、アラタさんはそれを取り返してしまった。私がそれにすがって半年間自分を支えてきたものを、朝顔から支柱取り去るように簡単に、するりと抜いて行ってしまった。
ナゼ。
何度でも問おう、ナゼ。
あれは似ているだけの別の誰か。
いまさら此処に居るわけがない。
あれは似ているだけの別の誰か。
だと、何度思っても、間違えることができなかった。
そうして自棄っぱちになって、今またメグミさんに逃げを打とうとしている。卑怯だ。卑怯なのはわかってる。もうどうにもならないものを背負ってしまったし、あの人にこれを下ろすことは出来ない。
金曜までに決めてくださいねと言う。
せっかく諦めたものが、また無駄に。一方でそうも言う。
あの時よりも随分と自分の中での自分の価値は暴落したのだとわかる、あの時はあの人が恥ずかしかった、今はそれがない。そして本質は変わっていない。またあの人を辱めるつもりでいる。あの人は私に否定を生まないと、決めつけてかかっている。だから会いたがる。賢い。狡い。卑怯だ。
会わないにしても、声だけでも聴けたらば、と、私は言う。
もう片方の自分は、もう鬼気迫る目で止めることもない。
やめておきなよ。
悲惨じゃないか。
自棄を起こして。
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2005.08.02.23:57
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