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クリスタル「ファック」!
後ろ姿を、追いかけているのか。それとも逃げているのは私の方なのか。もしかしたら、始めからひとりで走っていたのかも、いや、確かに私はひとりで走っていて、ここまでやってきて、けれど一度でもひとりだったことはなくて、同じほどに、ひとりでなかったことなど、なかった。生まれてからずっと、
ひとりで走った。
ひとりではなかった。
貴方が、まるで雪待ち草のようにひっそりと影もなく、白の中に白くあるような優しさで、気付かれないようにずっと、後ろにいたことを、有り得ぬことと笑い飛ばして。
ひとりで。
Read More... ナゼ。操作されない気持ちを抱いていけるのにナゼ、もう見送らなくていいのだと気が付いたのにナゼ。追いかけて、追いついたらば今度は一緒に走って、貴方が、倒れても私は倒れずに、僕は倒れずに、倒れずに貴方を抱えて、やっぱり走っていけるような気がしていたけれども。
みんなどこに行ったのだろう。
冬の寒い講堂に立っていたりした、夏に陽の射さない階段ですれ違ったりもした、知らない国で互いの人生かすめただけだった、みんなどこに行ったのだろう。誰もが去った舞台の上で、もう語る言葉もない。ただ立っているだけの自分を、客席の一番後ろで息潜めて見つめている自分がいて。見守るなんてもんではなく、ただ見ているだけの自分がいる。うつむきもせず、死んだような眸で何も浮かべない顔。そんなものを見ているもう一人。どこかに行ってしまう気はあるのか。この劇場からまだ出られないでいるのか。凍えるほど寒くはない。生きていけないほどに寒くはない。けれど誰もいない。もうライトが灯らない。幕は下りもせず上がりもしない。この劇場にまだ立っているのか、私らは。
みんな、とっくに遠くへ行った。
誰も戻らない。
何幕も前の台詞を反芻する。
相手のいない芝居をやってみる。
そんなのはもう、おもしろくもなんともないけれども。
もしかしたらそこから何か新しいかたちの演劇が生まれるかもしれない。超新劇になったりするかもしれない。そんなユメのよーな期待でもって、もうひとりの自分もしつこく粘ってる。
信じた自分が莫迦だったのだとしか笑えない。そんな幕ですら、その時は娯楽だった。悲劇のつもりが、はたから見たら喜劇でしかなく。それなら見ている自分はどうだ、笑えるのか、本当に腹の底から笑えるのかと問われれば、裏側に惨めな靄が渦巻く。
何を見極めたいのだろう。
「見極める」。?
そんなことは知らない。
ただ答がほしい。
あらゆることに対する答がほしい。
突き詰めて問うならばたったふたつの答だけでいい。
なぜ私じゃなきゃいけなかったのか。
そしてなぜ、私ではなかったのか。
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2007.10.17.20:40
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