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病人役割
医療人類学には、「Sick Role」こと「病人役割」なる言葉が存在するらしいですネ。
病人には病気を治すための努力と病人に徹する義務とゆーものがあり、健康体なら課せられるはずの義務を「病気を治すために」免除してやるのだからその代わりアンタは治療に専念して早く社会復帰できるように努力しろ、という、病人もツライヨな役割のことを言うらしいのですが。
ナミヒラ先生によると、これも突っ込んでいけば色々と問題のある社会常識だっつー話でしたが、この単語に出逢った時に私は高校時代のある同級生のことを思い出したのです。
彼女はどことなく齧歯類に似た容貌に胡麻のような眸を持った、融通のきかないクソ真面目な優等生で、一緒にいるとヒジョーに鬱陶しいタイプの学生さん。そのゴマちゃんが、ある日、真っ赤な顔をしてふらふらしながら登校してきたのです。
「38度の熱があるの…」
焦点の合わない目でゴマちゃんは言うのです。
Read More... 38度!あと2度で40度!ちなみに人間、体温が40度になると死ぬって言うけど実際はそれくらいで簡単に死にやがらないよネ!いや、そんなこたぁどーでもいいヨ!大丈夫なのか、ゴマちゃん!
保健室に行こうか、と袖引く私に向かってゴマちゃんの一言。
「私、皆勤賞目指してるから、頑張らないと…」
あ。
このヒト、やだな!
と思いましたよ、オレは!!こーゆーのすごくヤダな!!と。ゴマちゃん自身はそれで何だか「私、頑張ってるワ!」みたいな気分になれるのかもしれない。38 度の熱をおして学校に来るというのは、例えば私みたいに意志の弱い人間なんかは絶対やらない行為で、それを実行するにはそれなりの気力と体力を要するのでありましょう。その点でゴマちゃんは確かに「頑張っ」たことになるのでありましょう。
しかし、「頑張る」ってのは必ずしも賞賛されるべきことですか。
他人に迷惑をかける「頑張り」ってのも、あるんじゃないですか。
38度の熱をおして学校に来るのは君の勝手だ。
しかしその風邪が他の人に伝染ったらどうする。
アンタには家で寝ている義務がある!
学校に来るのなんて、38度の熱のある人間にとって義務じゃない!
と、怒鳴りたい気持ちを抑えてゴマちゃんから遠ざかったのでした。執念深い人間なので、そのときの何だか苛々するモヤモヤした感じがずっと記憶の底にこびりついていたのです。が、それが「病人役割」という言葉を見て少しスッキリ、いたしました。
しないほうがいい頑張りもある、ということも。
他人の迷惑になる頑張りならしないほうがマシ。
自分が何をすべきなのか、周囲も見直して考えるべき。
だとね。
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2005.02.23.22:18
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