>>トップページへ戻る

2004 / 習作


ワイヤハ

 水から揚げられた、砂に降ろされた。
 途端に波打ち際の泥砂に潜り込み、身体の中を造り替えて私は息をした。

トロピカピックル

 気の毒な彼女の大切な手鞠が、焼失してしまった料亭の火事の夜は、
 遠い外国の海で小さな安物の船が沈んでいた。

フレッティング・タイピング

 私よりもはるかに、強い眸。堅い声。
 地下鉄の窓にも彼女が映る、にやにやと笑う。

ことのふ

 闇を破るな義を重んじよ
 光を導け百億を殺せ

お椀を抱いて

 君の中に僕はどれくらい残っているのか、それならばそれで。
 僕の中に君はどれくらい姿を変えたのか、それならば。

マスカラボンド

 貴方の血が、描き出したものは美しかった。
 貴方の血で描き出したものは、快かった。

KAFKA

 そんな素敵な世の中ならば僕は生きられたかもしれなかったけれど、
 神さまは僕の上にそんな救済をくださらなかった。

△ Page Top