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再校
時間は私が何をしようともしまいとも、勝手に流れて進んでくれる。時に残酷だけれども、時にとても優しい。だから時間に委ねきりにして私は諦めた。窓の方を向いて、中庭にたっていた変な像を見ていた。心の中でどうしようどうしようがぐるぐるしていた。目も見なかった。
目を見たらたぶんそのたびに、私は心の中で貴方を嘲ったでしょう。
それが今まで貴方にしてきたことだったから。
目が合えば私は私を蔑んだ。こんな人なんかに、と思ったから。
ごめんなさい。
こんな、と指さされるべきは私。
内側も外側もどろどろの私。貴方を誇れるような自分にはなれなかった。貴方の内側に強く惹かれながら。
Read More... 自分を飾り立てる気力は失せた。
どんな色で飾っても、どんな布で隠しても、もう私の本質は隠しきれない。そこら中からきたないものが滲み出てくる。目も言葉も指の軌跡も何もかもが、私のヘドロの表出です。一緒にいる人をどんどん汚していく。
貴方の上に降る必要のない泥が降っていく。
窓の方を向いていた。心のなかで、すごい勢いでぐるぐる回っているものがあった。もやもやと混じり合っていく汚らしい色があった。今にも口をつきそうだった。窓の方を向いていた。貴方の声が頭の上のほうを飛んでいった時だけ、下を向いた。
帰ってきて顔を落としたらば、そんなにですか、と自分でも驚くくらいに切れ目なく
私はあの人の声とひととなりがすきだった。あの人の声が自分の頭の上を飛んでいってしまっても、声がこちらを向いているということだけで私は嬉しかった。そしてその声の紡ぎ目から見える優しさがあの人のひととなりを、表していた。
私は貴方の声とひととなりがすきだった。とても。
そしてそれ以外の部分のすべてに私は否を下した。私が、今までに自分で育んだ私の自我、私が、今まで外因に揺すぶられて自ずから選択を下し形成してきた私の自我が、貴方の声とひととなりは許した。その他の全てを拒絶した。わたしが、人の本質を尊重しない、ヘドロだから。
私は貴方を想いながら貴方を拒絶した。貴方を辱めて貴方を貶めた。そして同じほどに、それ以上に、自分の下劣さを披露しただけだった。もしも私がこんな卑屈な人格じゃなかったらば。
ヘドロじゃなかったらば。外側も醜い器、内側はドロドロのヘドロ。隠してもやっぱり本質はヘドロ。もし私が、たとえ外側が今と同じだろうとももし内側が、聖水であったなら、私は自ずから想った貴方をまた自ずから、あんなふうに辱める必要はなかったはずなのに。
貴方を想う自分自身すら恥じていた。
私が恥じたのは貴方ではなく、私に残った私の最後の良心だった。
私は知らずに自分の良心を恥じた。貴方の内側の本質に惹かれた自分の良心を恥じた。それがどういうことなのか、卑屈の意味をわかっていて尚恥じた。
私自身がヘドロだったから。
私は貴方の上に泥を塗るだけ塗りたくって貴方の外側を汚したけれど、貴方の内側にまでは、私の良心の欠片が惹かれた貴方の本質までは、その泥が決して沁みていかないことを信じます。都合の良い話だけれども、私のような卑屈な人間ごときに、貴方は汚され得ないと信じます。私は貴方を斬り捨てた瞬間に、自分の良心も投げ捨てました。
ごめんなさい。
私なんかが貴方をすきになってごめんなさい。
もしもこの先に貴方が少しでも私を思い出すことがあるのなら、少しでいい、私を憎んで、そして愚かさを哀れんで。そうすることで私にもしできるなら償いをさせて。私が貴方を想った、そのことも疑ってください。信じないでください。私がただ貴方に対して悪意の塊だけだったと思ってください。その為だけに出逢ったのだと。
私なんかが、貴方に惹かれた振りをして
ごめんなさい。
この先の貴方が輝く心を持つ人に出逢えるように。
貴方に見合った透き通る水を満たした人に出逢えるように。
ただ申し訳なくて切れ目なく泣いた。
貴方がすきだったからじゃない。
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2004.12.03.20:23
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