恋ヒシカルベキ

少しばかり歯ぎしりなどして。
少しばかり動きを止めて。
少しばかり気弱になる。

見下ろしているのはそろそろヤだよ。

このまま君を持ち上げられないのなら、引っ張り出すことができないのなら、私と入れ違いにそこから抛り出すこともできないのなら、私だってそっちに落ちたいよ。

尽力したとは言い難いけど、厭なんだ。
君のその、うなだれたうなじばかり見てるのは。

もっとこう、にまっと。
さもなくば、くしゃっと。

うなじばかし見せられるの、厭だよ。

顎をこう、もちあげて。
それほど悪い景色じゃあないよ。
どうしたって、其処に在るものしか見えやしないけども。
綺麗なものばっかりじゃない、醜いものもある。目を覆いたくなることも目を反らしたくなることも、いつまでも終わらないけども。
それほどに悪い景色じゃあないよ、私には貴方が見えているよ。うなだれたうなじだけでもそれでも見えないよりは見えたほうがいいんだよ。

貴方にも見えるものがあるでしょう。
見たいものがあるでしょう。
黒くても赤くても日向でも日陰でも、意志に沿って動く物も、意志に逆らって流されるものも、見えるものがあるでしょう。

顎をもちあげて。

それでも駄目なら、一緒に落ちる。