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いち早く逃げ出そう。
街へ出た。目的もなく僕は街へ出た。
(いや、年金前納しなければ。年金前納しなければ。と念じながら街へ出た。)
右も左も本の雑然と並べられた通路を一歩進むごとに、肩がみしみし重くなってゆく。
(内訳:内田百ケン集成1巻〜5巻 / 筑摩文庫)
指先に甘ったるい匂いのいつまでもまとわりついて離れないこと。今朝くらくらっときたトワレの匂いとはまた違う。
(香種:Xiang Do / VANILLA / 松栄堂)
Read More... そこら辺までは何も考えていなかったのだが、ホームに出た途端に恐ろしい勢いで周囲の人々が私の足を引っ張り始めたのだ。私はホームの端から端まで歩かなければならなかった。歩いている間に電車が一本出ていった。私は電車の出ていったあとのホームの端っこを歩いた。白線の内側を歩いた。柱の向こうに男の人の靴が見えた。そこら辺から周囲の人々が私の頭にまとわりつき始めた。
男の人。黒い靴。中肉中背。
女の人。若い。携帯電話。
女の人。買い物袋。探し物。
男の人。男の人。世間話。
小学生。制服。苦悩十種。
女の人。茶髪。ほっそい脚。
車掌さん。マスク。花粉症もしくは肺炎。
高校生。高校生。「あいつってチョーむかつく」。
女の人。化粧ゼロ。男っ気ゼロ。
幻想、ゼロ。家族連れ、ゼロ。失望、ゼロ。
色々な人とすれ違って色々な人の顔を見て色々な人の服を比べて、僕は唐突に気づく。条件に恋をしたのだったか、と。徐に気づく。制服を取り去って俸給を取り去って君の眼の前にどすんと置いたらば、それでも同じように恋をしたか?したか、君!と、気づく。制服と俸給と(と、呼称)を取り去ってただのここらへんですれ違っただけの人間と同じだけの存在ならば、同じように恋をしたか?したのか、君!と。
でもそれ、それを言い始めたらばキリがないのよ自分。そんなことを言ったらば、すれ違うだけの人間でもしたか!なんて言い始めたらば、誰だって恋になりゃしないよ。制服と俸給、は、あるのかも。条件に恋したさ!見事に比べるだけの重複項目だっただろうさ、でも、呼称?呼称、そう?
私あの時、頭が真っ白だったのだし。そこだけ独立したんではないかと思うほどにテキパキと明確に口動かして言葉は並べたけれども、その神経作用で一方で、
あ、左 、この人 と思っ
だぁッ、もう駄目だ!逃げ出そう!
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2003.04.10.15:41
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