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朝まだき
聴覚が奇妙なものをとらえて目が覚める。
人の鼓動のような息づかいのような、不定期ながらも一定の約束事を持って、時計の音とは明らかに違ってやわらかな。とくとくとく、とっくん、とっくん、と。
聴いていてとても落ち着く。自分の心臓かと思うけれども脈が合わないのでそうではない。不気味な感じはしない、耳のすぐそばで、音というよりも空気の震えで、とくとく、とっくん、とくとくとく、と。聴いていてとても安らぐ。
心地良いなぁ。
心地良い音だなぁ、なんと。
と思いながら時計を見たらばまだ五時半だったので、
をう、あと三十分寝られるわ。
と思ってまた眠ってしまった。
あれは何だったのだらう。
Read More... >>ヴァージョン1.1
街を歩きながらも、明け方の音のことが気にかかってしょうがない。何だったのだろう何だったのだろう、と言うよりも、もう一度聴きたいもう一度聴きたい、と思って。
きっとあの時、目が覚めたばかりで頭がぼーっとしていたので、「あと三十分!」などと二度寝を決め込まないで、きちんと起きて確かめていたらば原因も大したことではなくハッキリと知れて、いたのであろうに。
と思うともう悔やまれて悔やまれて仕方ない。
ほらね。
中途半端に都合の良い状態で残した記憶ってタチが悪いのだ。
>>ヴァージョン2.0
街を歩きながら、自分は果たして満たされているのかし、と考える。繰り返す。幼稚園の桜の木はアレ、満開と言って良いのであろうな。ひらひら、なんて散りゃあしない。花がそのままぼろぼろ落ちてきた。へっへっへー、と少し、ざまを見ヨ、などと思って。嫉妬なのかもしれない、桜にシット?
>>ヴァージョン2.02
街を歩きながら、自分は果たして満たされているのかし、と考える。こんな日もきっとあの人は壁の中で病巣に耳すましているのだわ、と思うと小春日和にも意味がない。自分は果たして満たされているのかし、と考える。君の、手を、離しただけでも、去年よりは前進したのじゃないか、と考える。×年分のブランクをどうやって埋めるかが、これからの問題なのだわ、と考える。
>>ヴァージョン2.6
街を歩きながら、自分は果たして満たされているのかし、と考える。逢わなくなって一週間、である筈なのに、自分にはそれに気づいてからの一週間、でしかないのだ、と、今朝洗濯をしながら気が付いた。そういうの、それって、駄目なんじゃん?
>>ヴァージョン2.8
街を歩きながら、自分は果たして満たされているのかし、と考える。春休みだというのに野球部の面々が中学校からわらわらと出てくる。ばあちゃん達が植木に水をやっている。群青の車がゆっくりゆっくり坂を下る。桜は花ごとぼろぼろと落ちる。こんなお天気の日でもあの人は病巣に耳傾ける。私は
僕は
そろそろと君の 手を離す。
自分は満たされているのかし、と考える。
指の先と指の先ばかり、まだ繋がっているようで、思い切って、かたくかたく手を握り、また広げて、
僕は君を忘れるかもしれない。
君に代わって僕に言葉を孕ませる、君と同じく二度と再び顔合わせない、人がいるのだ。
>>ヴァージョン3.0
街を見上げながら思い出す、昨夜寝入りばなに思ったことをもろもろと。仕方がないのだ、出逢ってしまった。仕方がないのだ、サヨナラを言った。仕方がなかった、その後に目覚めた。仕方がなかった、僕は飢えていた。仕方がなかった、他に誰もいなかったから。仕方がなかったのは諦めじゃないのだ、起きてしまった事象の認識なのだ。だから、それを言うのも僕は僕に許すしかない。いや、寛大なる心持って、僕は僕を許す。
>>ヴァージョン4.0
街を西に向かって歩く。自分を賭けるかどうかを考える。今だから自分が惜しくもないけれども、目的に向かっている今だから自分を賭けても良いと思うけれども、自分を賭けて目的に近づいて、その後はどうなるのかを考える。その後で自分が惜しくなったらどうするのかを考える。私、煙草は吸わない。
>>ヴァージョン2.6(バグを発見)
街を歩きながら、自分は果たして満たされているのかし、と考える。毎朝毎朝目が覚めるたびに、忘れているのにムリヤリ思い出してその名を唱えている自分がいるのだから、即ち、それ即ち。
私は自分を演出している、のであって。
かりそめばかり抱き締めて、何もかも今まさに失おうとしている。
のに他ならない。
と結論づける。
かりそめを抱き締めて。
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2003.04.03.17:20
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