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三つ目
夜は深まると、ココロも深まってゆくようで厭だね。
なんだか本音に近いところにぐんぐん近づく。
夜中に日記なんか書くとろくな事がない。
忘れようと決めたんだ。
一大決心というほどの事もなかったのだ。その時は。もうこんなに会ってないし、というか、私が一方的に顔を、見ることもないし(ああいうのを「会う」と世間では言わないのだ、きっと)、ここ一年くらいもう夢もみないし、元からそんなに出てきてもくれなかったし、思い出すことももうあんまりないし、名前だってなんだか妥協で呼んでいるみたいだし、口癖、とか、習慣、とか。そういう呼び方のほうがしっくりくるくらいだし。
思い切って決めてみたらば結構すんなりいくんでないかしら?
と思ったのだ。
Read More... 阿呆なのか天の邪鬼なのか知らないよ。
たぶん両方だ。
そしてそれ以上なのだ。
忘れるのだヨ、と決めた途端に、それまで忘れていたいろんなシナリィを思い出し始めたのだ。この目が。それまで本当に忘れていた一つ一つ。
ベイズウォータァ。
ビクトリア。
グロウチェスター。
空。鏡。
離れたくなくて残りたくて、だけど自分を犠牲にすることができなかった、「どうにかなってしまえなかったらどうするの」、まっすぐ正面を向いているしかなかった、左を向いて顔を背けるのも、右を向いて顔見合わせるのも、私にはできなかった。顔を動かしたらぼろぼろに泣いていた。だから正面を向いているしかなかった。初夏だった。からっからの晴れだった。水面だった。見ているしかなかった。水も。
なんだかそのときの自分の背中を思い出せるよ。
後ろから見ると、から晴れの景色の中で自分の背中だけが真っ暗なんだ。
私の背中だけ、真っ黒だった。
私もあんまり莫迦じゃないので、もう貴方に、何も期待は、していない。
数年前はほとんど強がりで言った。
「結婚とか しててもいい頃かもしれない」、
今はとても静かに思うこともできる。
だから、忘れられると思ったし、忘れてみなけりゃ始まらないと、そんな決心もすることができた。それまでは忘れることすら放棄していたのに、ずいぶん成長したもんだと。思っていたのに。いたけれど。
あっという間に覆したい決心に変わってしまって。
阿呆だね。
天の邪鬼なんだ。
やっぱりただの、恋だったんだね。
恋の持っている莫迦莫迦しさ、振り返って呆けるほどの、あきれるほどの愚かしさ、すべて私の中に今息づいている。そうして終わらなければ気づかない筈のその正体が見えている。
泣くの、自分。どうして。
なぜ泣かなければいけないの。
何もない関係が、名前すら本当かもわからない他人が、なぜまとわりつくの。
堂々とはしていなかったかもしれない。むしろ卑怯であったかもしれない。知らないから何も言えない。知らないから、
知らないけれど、わからないけれど、
やっぱりわからないよね。知らないのだから、何とでも言えるのでしょ。だから都合良くかき混ぜて自分の好きなように残像を作り替えられたのだ。もう綺麗事なんて言いたくない。
私は少なくとも、言えるようになったよ。名前。
忘れる と。
今まではどうしてもこれが言えなかった。
だけど今は大丈夫。
本当に恐ろしいのは貴方を忘れてしまうことじゃない。
貴方を忘れて、そこに何も残っていないこと、それが一番恐ろしい。
私は貴方じゃない。
私には貴方以外の私がある。
そのことを確かめる、それが一番勇気のいる。
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2004.03.18.20:01
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