2004 / オハナシ
ちぎり
刃を持たないのは他人のせいではなかった。
誰も己の為の刃など、与えられてはいなかった。
柳刃蛍
蒼くて暗い、夏の宵のなかを、蛍はその人に向かって飛んだ。
そして浴衣のあわせのあたりに、吸い込まれるようにすいっと消えた。
現世墨磨り【うつしよすみすり】
押し花でもするように、かんたんに、
かのひとの頸を掴んで、きりきりと絞めて、
2004 / オハナシちぎり 刃を持たないのは他人のせいではなかった。 柳刃蛍 蒼くて暗い、夏の宵のなかを、蛍はその人に向かって飛んだ。 現世墨磨り【うつしよすみすり】 押し花でもするように、かんたんに、 |