静止
そのこは、もう無駄だよ。
そのこは、もう息しかしないから、見ていてもつまらないよ。
そのこは、もう歩かないから。
そんなことない、私まだ歩けるのよ。
まだ立てるし、まだ歩けるのよ。
ただ、時が来ていないだけ。
息だけしかしてない、それは、本当。
そのこは、もう駄目だ。
息はしているけれど、もう駄目だ。
もう二度と立ち上がらない、二度と歩かない。
そんなことない、私まだ歩けるのよ。
足はちゃんと付いてるし、どこも悪いとこなんてないのに。
歩きたいだけ、それなのに、手を引いてくれる人がいないだけ、
どこに行けばいいのかわからないだけなのよ。
そのこは、もう連れて行っても足手まといだよ。
息はしているけれど、死んでいるのも同じだよ。
自分の意志で指一本、動かすことも忘れてしまったから。
そんなこと。
そんなことないのよね。
貴方は信じてくれるんでしょ。
そんなことないって、信じてくれてるんでしょ。
ちゃんと私の、目を見てよ。
「死人だよ」。
違う違う、
違う。
違う。
(空を見上げると、あの人を思い出すの。
空がどうこうの事じゃあないのよ。
見上げる自分の顔の動き、その自分の中にあの人がいるのよ。
初めからずっと、空を仲立ちにあの人とは在ったの。
きっともう忘れているでしょう。
それでいいのだと言えるし、
それでいいのだと思うの。
だって他に成りようがないもの。)
[2002/2/1 (Fri)]
| 2002 / 習作 |