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マルマレイダ

 Aちゃんは言った。

  オンナなら誰だってあの話の寓意を知っているわヨね、

 と。
 Kちゃんは言った。

  だけどアタシには彼女の考えていたことがわからない、もしアタシが彼女だったらば、絶対に二人の心臓えぐり出してしまっていたのに、

 と。
 私は思う。

  莫迦なんだよ、あいつ。
  ほんと、真実なんてそれだけなのよ。

 Aちゃんは言った。

  だけどホラ、所謂ムカシカタギ?って言う奴、そう、それよ

 と。
 Kちゃんは言った。

  いいや、納得いくもんか、昔気質にだって程がある、アタシだったら絶対自分だけでもやり直す、

 と。
 私は思う。

  やり直し。
  誰もがやり直しを、できた試しがなかったのよね。

 Aちゃんは言った。

  泡になるってどういうことかシら、

 と。
 Kちゃんは言った。

  泡になるって幸せなのかしら、

 と。
 私は思う。

  シアワセも何もない、ただ次のステージに進んだという、だけのことではないのだろうか。

 Aちゃんは言った。

  損だわね、

 と。
 Kちゃんは言った。

  アタシだったら、

 と。
 私は思う。

  オンナだったら誰だってあの話の寓意を知っている。
  一度ひらいてしまった脚が、二度と再びとじないということ。

 Aちゃんは言った。

  近頃花が、こわいのよ、

 と。
 Kちゃんが応じる。

  アタシも花が、気持ち悪い、

 と。
 私は思う。

  近頃、花は、気持ち悪い。どの花を見ても、気持ちが悪い。
  あの花弁の裾の、びらびらとした輪郭がどうも心持ち悪い。
  覗き込んだ花弁の奥の、雌蕊の角度が心持ち悪い。

 Aちゃんが言った。

  彼女、バカよね。結局、バカよね。

 Kちゃんが言った。

  アタシだったら、アタシだったら。

 私は思う。

  ひらいた脚は戻らない、
  今年は花が淫乱すぎる、
  女なら誰もあの話の寓意は知っている、

 私たちはまるで、泡になることを拒んだ成れの果て。

[2003/4/22 (Tue)]

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