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恋愛不本位

 雨が流れても窓を開けられない、あの窓がぐるりと廻ると飛び降りてしまうのだ。私は貴方を掴んで飛び出してしまうのだ。

 それとも貴方は貴方だけ勝手に飛びますか。

 首から外して机上に置いて、少し表情を止めて、

 それとも僕は貴女だけ突き落としても良いのです。

 誰も止めないから。
 誰も見ていないから。
 そんなことすらできるのに、動こうとしない。

 そうなのですか、

 と 言う。
 雨がざらざら落ちていく。
 窓の中では何も聞こえない。

 そうなのですよ。

 と 拒む。
 壁がだらだら濡れてゆく。
 窓の中では乾燥ばかり、ぱりぱりと破れて、ひらひらと飛ぶ。
 ぱりぱりと剥がれて、ぽろぽろと崩れる。
 誰もいない、他に誰もいなくとも、触れることのできない。

 もう帰ってもいいですか、

 と
 (まるで喧嘩をふっかけているような)
 火の粉を降らす。
 しゅわしゅわと蒸気が落ちる、目に見えない滴で髪の毛につく。脈絡がなくも北欧のことを、考える。

 まあ
 いいでしょう
 大丈夫ですか

 言われた言葉を反芻するばかりで、意味など考えていなかった。答えなど出すわけにいかなかった。まあいいでしょうだいじょうぶですか、まあいいでしょうだいじょうぶですか、が、ひたすらにぐるぐるとしていただけ。まあいいでしょうだいじょうぶですか。
 何が「いい」ので何が「だいじょうぶ」なのか、まあいいでしょうだいじょうぶですか、ですか。ですか。何がだいじょうぶ、なのか。

 風が随分強いらしいけれども木すら見えない階にいたので、窓の中はやっぱり静まり返ったままだった。誰か廊下をぱたぱたと行く。足音は右から左に遠ざかる。

 あの実は

 もし僕が

 同時に言いかけて同時に思いとどまる。
 引きちぎってはいけない理性の幾重にも絡まる境界線、いつもきっちりと爪の先、膝の先、膚の上、視線の周囲。
 同時に言いかけて同時に、立ち上がり、貴方はすたすた出ていけばいいけれど私は何も聞こえない乾燥した部屋の中に取り残されて、私は窓の外のことを思う。
 だらだら雨が降りごうごう風が吹き壁が黒く濡れてゆく、木が揺すられる窓の外のことを思う。

 ここは居場所。

[2003/3/28 (Fri)]

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