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北東の壁

 自分の首ぎゅうぎゅう締めて、頭が心臓の一鼓動ごとに張って張って破裂するのではないかと思った時に。
 走馬燈、走馬燈!
 頼むから走馬燈、早く目の前に走馬燈!

 どくんどくん。
 締めつけた首の中で血の動きが頭にがつんがつん、響いては膨れあがるような感覚の下にあった時に。
 走馬燈、走馬燈!
 この手は緩められない、頼むから走馬燈、早く目の前に走馬燈!

 必死でそればかり願っていた時に、その時に、

 だらだらっと、今までで一番熱いのではないかと思うような涙が流れて、身体の中は勝手に叫びだした。

 すきだった、
 どうしたら満足?どうしたら不満!
 どこまでが満足?どこまでが不満!
 すきだった、
 何もかもぶちまけてしまっていたら今の自分から逃げ出せた?
 どこまでを預けてしまっていたら今の自分から逃げ出せた!
 すきだった、
 すきだった、
 頼むから死んでくれ、まだ死んでいないのなら君こそ先に死んでくれ、君、
 そうして私をそっちに引いて、頼むから早く引いて、
 すきだった、
 もう一度きりでいい逢いたかった、
 もう二度と逢わなくてもそれでいい、
 すきだった、
 こんな自分だけど貴方がすきだった、

 無駄だ!

 どくんどくん、
 がつんがつん、

 この手は緩められない、
 今までで一番熱い、なんで、涙、
 死に顔に涙は厭だ、

 どくんどくん、
 がつんがつん、

 すきだった

 あの眸

 ぎゅうぎゅうに、咽を締め上げて、首の中で血が一鼓動蠢くたびに、頭の中は張り裂けるようで、そんな時に今までで一番熱いのではないかと思うような涙、走馬燈よりも同じ言葉ばかりがぐるぐる巡り、

 未練だ!

 そう気が付いた瞬間にはもう遅かった。

[2003/3/18 (Tue)]

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