こととふ
まだ若くして
氷の下に沈んだ時に、氷柱は其方を除けて通りはしなかったか、
雹が其方を避けて砕けたことはなかったか。
いつかそれと知らぬままに出逢うことがある。
いつか必ず出逢うことはある。
敵味方に別れていても裏切ってはいけない。
疑ってはいけない。
異なった方向に引かれている時にも、まず其方が強く信じることである。
さすれば必ず正面を向こうぞ、
其の者、血の化身なり。
其方が身を投げ出して信じれば、其の者、身を捨てて正面に返ること必至。
まず其方が強く信じること。
もう何の信実も残っては居らじと見える時にこそ、
最後の盾として心中に信念を突き立てて決して頽れず、其方こそが誠実を貫き通すこと。
さすれば身を捨てて闇から朱を現そうぞ、
其の者、血の化身。
闇を破りて心正しき故に必ず正面に返る。
かくして其方に宿る守護となるであろう。
予言師の告げた心正しき者とは貴女のことか。
刃を交えて膚を斬った時にその血の紅さに目を射られたようだ、
生身か、其の方、生身の存在か。
暗き闇に心情を覆われ感情を伏せられ、双方の眸の色すら翳ろうとしているが、
この血、この血の紅さは何としたことか。
予言師の告げた血の化身とは貴女のことか。
その無限より広い暗闇の内で、正面に返るほどの確固とした我を抱いているか。
予言師の告げた守護とは貴女のことか。
君臨する黒雲を覆し、その血の紅さをもってして、この身を守る運命にあるか。
[2003/2/28 (Fri)]
| 2003 / 習作 |