2002年9月
■ 2002年9月1日(日)
最後に貴方の眸が映したものを忘れ得ぬように
貴方の眸が映したものが最後のそれであるように
私は正面に立つ
貴方は瞼をおろす
足元をどうしよう
崩れてゆく足元を
■ 2002年9月3日(火)
八月の遺物に狂ったように
花が駆け込む
■ 2002年9月4日(水)
しあわせな夢をみていたような気がしたけれど、
もう忘れてしまったんだ、何もかも
真実 自分の名
奪われたんじゃない、忘れてしまったんだ
■ 2002年9月4日(水)
かりかくる
さりされず
いねどもいらず
しからばしかれ
あやむればあまのぼる
■ 2002年9月4日(水)
空にただふたつの気球となれば
さのみ欲する
■ 2002年9月4日(水)
もぬけの殻は雲の上で月を浴び
取り残された魂が
あまつかぜ駆って誤りを追う
■ 2002年9月5日(木)
遅すぎたのろのろは追いつくことができないらしい
それだから君は歩くのを諦めるかい
と問われても選択権などあるわけがないし
たまに立ち止まって道ばたで眠る
それだけが許された唯一の休養だけれども
僕は目をとじることができる
僕は想うことができる
僕は偽れる
■ 2002年9月5日(木)
どんな悲哀も平凡だ
空からながめると景色はなんて退屈だ
■ 2002年9月7日(土)
もう僕は駄目だ。と、何回も思った。
やはり君がすきだ。とは、もう思わない。
そこのところを乗り越えて、なぜ過去にできないか考えた。
いつの間にかゼッタイに君を据えてしまったのだと思う。
ゼッタイの意味を信じないまま、君にその名をつけてしまった。
呪縛であると思う。
憎悪であると思う。
敬虔でなくてよい。
僕は何よりも孤独の恋をする。
■ 2002年9月8日(日)
戻っても手からいつか零れるのだから
手の内にある今を最後に
手を切り落としてしまうことにしたよ。
もう何も掴めぬように
手を失ったまま生きるほうがいいんだ。
君の感覚は脳にいつまでも残すよ。
さよなら。
■ 2002年9月9日(月)
生かしておいた方が得だからです、と、
私の首を絞めたままで言って、
私情なんて挟む余地はないのだ、と、
庇った?
■ 2002年9月9日(月)
船の上から雷雨を通して見た人は
これからきっと誰かを愛して
その人を残して死ぬのでしょう
■ 2002年9月9日(月)
血を流しているのを無理にひきずると、
君は途中で死んでしまうかもしれない。
だからここで一旦殺してしまおう。
誰かに生まれ代われたら、いつか僕を捜してくれ。
■ 2002年9月9日(月)
貴方の仇はとりました
■ 2002年9月16日(月)
高めず、貶めもしない
ただの真っ裸なこころでよいのです
汚れていても埃まみれでも
憎悪で満たされていても
貴方の真っ裸なこころがよいのです
■ 2002年9月21日(土)
true words never spoken
■ 2002年9月26日(木)
葉が落ちるのを見るとザマアミロと思う
僕は死にゆくものがとてもすきだ
見せかけの偽りでも
■ 2002年9月26日(木)
海岸のむこうに見えるのは海の彼方の白い砂浜
手をふる人もいる
網も飛んでくる
波をかぶっても磯くさくなっても立ち上がらない
もう少しここにいる
見たい光景がある
■ 2002年9月26日(木)
女のくびと唇は思い出せるのに
鼻から上はわからないんだ
青白いくびに紅光る唇
それを 絞めてもよい?
■ 2002年9月26日(木)
眸が澄んで見えたのはそれがぎらぎらふるえるせい
くりぬいたらばガラス玉とおなじでつまらない
■ 2002年9月28日(土)
雪にうもれて自分に蓋をするのは苦しくないですか
ロープが切れて帰り道がわからないとなると
誰かにそれを引かれます
迷ったままの魂が此処には山と残っているから
■ 2002年9月30日(月)
それでも追いやることができないと
指も触れず声もかけないけれども
遠いところから気づかれぬよう見つめるだけでも
叶わぬと言う
■ 2002年9月30日(月)
偽りもないほどに真っ白で何もない僕たち
在るということしか存在しなかった僕たち
空が
月が
白い
君が
■ 2002年9月30日(月)
君が在っただけ
僕も
そこにいただけ
流れの一つだっただけ
然かるだけ
■ 2002年9月30日(月)
香水をふりまいてバリアリングするとよい
頭のなかを匂いでぎゅうぎゅうにするとよい
| 2002 / 片鱗 |