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providence / 神意

 僕はそろそろ、堪えられなくなる。
 僕は君に堪えられなくなる。
 次から次へと降り積もる君の言葉が、処理しきれなくなる。
 それでも君がすきだ。
 だからいっそのこと、君を手放してしまおうか、などと思う。
 君を手放しても、君がそのまま空をふわふわするのではいけない。
 だからいっそ、君を埋めてしまおうか、などと思う。
 君を埋めてしまって、掘り返したくなるといけない。
 想い出を切り離して、全ての断片を別々のところに埋めたらば、どうだろう。

 けれどもし、その一つ一つに、この先いちいち足を、とられたら?
 もしもその、たった一つの中にすら、僕の姿が無かったら。
 僕はやはり、君に堪えられなくなる。
 そして君をどうにも消してしまうことのできない、君をあり得ぬこととして処理することのできない。

 在ったること。

 君の触れた全てのものを一つ一つ海にほうる。
 君の通った全ての街を一つ一つ灰燼に帰す。
 君の出逢った全ての人を一人一人眠らせてゆく。
 君の放った全ての言葉を片っ端から消し去ってゆく。

 人は語らなくなる。人は歩まなくなる。人は指も動かさず、そして誰もが誰をも憶えていない。君を誰も憶えていない。君を想い出させる全てのものを消してゆく。

 在ったること、君の眸はまさしく僕の眸の中に在ったること、それならば僕は僕の眸を潰してしまうしかない。
 在ったること、君の嘲笑が僕の鼓膜を痛いほどあの時突いたこと、それならば僕は僕の耳を塞いでしまうしかない。
 在ったること、君の生き様が僕の生き様の中に鮮明に焼き付いてそのまま色褪せもしないこと、君のあの立ち姿、君のあのたった数歩、僕に向けて歩んだあの数歩、君のあの尊くも畏怖しかできなかった縛り付けるような眼差しと、強い瞳線、ほんの一刹那のうちに反れてゆくその瞳線が、僕の思わず伏せた瞼も瞳も突き抜けて深い深い深い、意識もしない闇に届いてしまった。一億年も眠り続けた闇に届いてしまった。それならば、それならば僕は、終わらせるしかない。

 終わらせてしまうしかない、君に巡るまでの血の細い細い道程。
 君からまた巡りゆく血の細い細い道程。

 二度と再び君に巡り来ることを畏れるが故に、僕は終焉を叩きつける、
 僕ら全ての上に。

[2004/2/3]

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