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雪白(未完)

 焦点の合わぬ目をした女が、髪の先からするすると、ひとすじに雪へ融けていく。

 それを見つめながら息を逃した。
 これで眠れる。
 そう思った。

 もうあの忌々しい瞳を見ることもない。
 二度とあの髪を指にかけることは。
 深く傷のついた心の膚。
 冷えた頬の、清と堅い拒絶。

 もう二度と胸は疼かないはずだった。
 これで眠れる。そのはずだった。

 雪に負けたのだ。
 白きに負けた。
 雪の、解けて混じってぐちゃぐちゃと、穢れていく様を畏れるばかりに、火を示した。
 自ら火に入れと、無言のうちに、追い詰めた。
 この手で直に終わらせた方が、どれほど良かったかは知れぬまま。

 雪白。
 雪から生まれた異界の娘を、火に入れた。
 白き膚の、穢れる様を、畏れるばかり。
 その膚を守るなど、夢にも思わず。思考すらかすめず。
 雪の白きを、ただ刹那の恋にもろとも、消しさらんとばかりに。

 恋 ではない。

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