扉の閉まり方
何をしにここへ来たのかわかりません。
何を求めてここへ来たのかわかりません。
気が付いたら、ここに居た。
気が付いたらば、独りだった。
それだけです。それだけなのに、私の為したことなのです。何故ですか。
私が悪いのですか。
私が悪いのに決まっている。それ以外に答えがない、その理由は、何ですか。
私、貴方に何を言っていただきたいのかわかりません。
貴方が何を言えば私に一番良いのか、わかりません。
貴方に何を言っていただきたいのか、わかりません。貴方から、何をいただけば、一番嬉しいのか。
私、あの人に、何を
私、あの人が、
言葉がもう出てこない。
何を、欲しているのかも、もう、わかりません。
私。
ただ、名前を呼ぶ、ただそれだけです。何故でしょう。
私の為してきた事、私はその時、理由を持っていたのでしょうか。
あの人の為したこと、あの人はいちいち、理由を持っていましたか。
もしくだらない偶然と気まぐれの積み重ね、ただそれだけで、今の私があるのなら、それは、何故ですか。
私が私をぐだぐだと。
うだうだと涙をこぼして、ごめんなさい。
頭が痛くて。
わからない、理由もないままに、勝手にこぼれるのです。ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。何を謝るのかもわからないけれど、ごめんなさい。
私が悪いのです。私が悪いのに、涙などこぼして、ごめんなさい。
だけど頭が、ひどく痛むのです。
私は私の為に泣いているのです。私は私が、あまりに惨めで。
頭が痛くて。
何がどうなっているのか、わからなくて、頭がひどく、ずきずきと。
行き止まり。これは行き止まり以外の何でもない。
もうずうっと前からです。私には袋小路の壁が見えていた。
貴方にお逢いした時からです。
私は壁に突き当たるのを少しでも遅らせようと、じりじりと歩みを、ゆるめてきたのです。立ち止まって、爪の先ほどのみ、足を出して。立ち止まって。その繰り返し。けれどもう駄目です。私の前には、壁があるばかり。
もうこれ以上、何をどうしようと、私は。
行き止まりに突き当たり。
もう少し早く心を決めて、まだ道の残されていた頃に、走りだして壁に突き当たったらば、崩れ得ていたのかもしれません。
けれど、何を言っても、もう今更です。
何もかも、もう遅い。
出逢った瞬間から、全てが、手遅れでした。
出逢ってしまったところから。
いいえ、私が生まれたところから。
もしもやり直せるのならば、どこからでもやり直しがきくというのなら、私は生まれを、取り消しましょう。
こんな辛い思いをすることがわかっているのなら。
私は、消えてしまいたい。もう何も言葉がありません。
何を求めているのか、わかりません。
唯一、自分の為にと思い、固く抱きしめていたものすら、私は意味を失いました。私は、結局のところ私は、それで、成しうるものが何もない。何もないのだとわかりました。
恋がきえてゆく。
全ての恋がきえてゆく。
するする、糸をたぐりつづけていた人の、恋がきえました。
さらさら、紙へつづりつづけてきた言の、恋がきえました。
私はもう言葉を持ちません。
何をしていただきたいのか、わからない。
何をすればいいのか。
もう何もわからない。
私は意味を見失いました。
言葉を、失いました。
恋が、きえていった。
きえてしまいたい。
瞼をとじて、もう何も、映らぬように。やきつかぬように。
耳を塞いで、何も入り込まぬように。何も心に、刺さらぬように。
二度と私を傷つけぬよう。
私はたしかにそれが、大切でした。
私は自分がそれを必要としているのだと思っていた。
けれどもう何も救いにならない。
何も支えになりません。
許していただかなくて結構です。
もう、恋はいたしません。
できません。
返事をせずに、行くことを許してください。
私はもう一文字も、出せません。
| 2000 / オハナシ |