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canon / カノン

 貴方の掌中に宿るものは私、そして私は花、美しくなくとも花。
 貴方の掌中に宿る光は私、その私は染み一つない白さ、土にまみれようとも。
 貴方の掌中に宿る力は私、やがて抛られる。

 貴方を離れて、速く強く、叩きつけられる。

 貴方を託されて、強く離れてゆく。

 私は花。
 貴方の指で摘み取られてゆく、貴方の意志で枯れてゆく、千切られた足元から少しずつ腐ってゆく、私は花。
 美しくなくとも花。
 貴方の良いように、枯れてゆく。
 貴方の為に、咲き誇るなどしない、ただ枯れてゆくだけの、美しくなくとも花。
 貴方の掌中に宿る命は私、弱い光のままで消えてゆく、それでも命は私。
 貴方の胸中に残る埋み火となる。
 貴方が口をひらく度に煙となって立ちのぼる。
 誰もが、貴方の胸中に燻る私のことをいつか、気がつくように。いつか誰も知らぬ間に消えていた私を、気づくように。
 私は花、美しくなくとも。
 私は光、強く誰の眼を射ることもないけれど。
 私は歌。
 紡がれてゆく、そして人の裡から裡へと紡がれてゆく、私は歌。

 耳を塞がずに、私を聴いて。
 貴方の裡より、私を紡いで。

 私は歌。
 恋を背負い、哀を背負う。
 貴方を囲む全ての流れの、貴方に至る全ての動作の、直線をつたって貴方に届く。貴方の耳に押し寄せる。貴方を動かす。
 私は力。
 貴方の掌中に宿り、貴方を離れる。
 貴方に託されて貴方を離れる、私は力。

 貴方を貴方が貴方であるために立つべきその場所に留めおくために私は貴方から託されて貴方を離れる。

 私は力。
 貴方を信じて貴方自身を私に託して。
 私は貴方を強く離れる。

 貴方の掌中に宿り、やがて貴方を強く離れる。

[2004/5/7]

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