恋ヒシカルベキ

なり得るどころか確かに答えそのもの、なので、
口にできない。私からそれを口に出すことはできない。貴方と対峙はしても、貴方「達」と対峙はできない。

貴方から口に出しても、それは言い訳めいて聞こえるし。
それはやっぱり、答えでしかないし。

貴方には擁護すべきもので、私には一言で言い切れるほど簡単なものじゃない。私にも擁護すべきもので、同時に攻撃すべきもので、同時に、触れる権利すら持たない。

まるで、私たちは武器を片手に向き合って、もう片方の手でその盾を抱えて、斬り結びたい、斬り結んで共に血を流したい、共に滅びたい、けれど貴方は救いたい、貴方だけを救いたい、だから貴方だけがその盾でその身を守ってくれれば良いと思う、その盾にだけばっさり斬り痕残して、貴方の剣で私は貫かれてしまえば良いと思う、それが結局は一番良いと思う。

否、貴方の盾も傷つけないでいられればそれが一番良い。

私が私の剣で勝手に自分を切り裂けば、誰の為にもそれが一番良いのだと。思う。

哀しいことに僕は知らないので。
君らがどうやって出逢ったのか、どうやって生きてきたのか、どうやって生きていくのか。
口に出したらば僕の受諾となる。口に出したらば君の受諾となる。その時にお互いが斬り結ぶ。共に血を流す。

私は貴方だけ助けたい。

やめやふよ。
どっちかがどっちかを憎み始める前に。
やめやふよ。

私はどっちに転んでも貴方を憎みそうだし。
貴方が一歩を踏み出さなかったことを憎むだろうし、貴方が一歩を退かなかったことを憎むだろうし、貴方が立ちつくしてそのままで、眸だけ逸らさなかったことも憎むだろうし、貴方が、

強くても弱くても。

がちがちの竹のようだった時、苛立った。
刃も立たなくて苛立った。
ぶんぶん撓る笹のような時も、同じように苛立った。
柔軟さについていけなかった。
ぷつぷつと端から切れてゆく今の弱さにまた苛立つ。

ナゼ、自分の中身に勝てないの。
ナゼ、自分の突っ走る毒性は制止できないの。

外から飛んできたどんなものにも貴方は耐えた。歯もくいしばらなかった、平左で乗り越えた。
だらだらと崩れ落ちそうになる他人を支え続けた。状況打破と、一気呵成が貴方の売りだった。

ナゼ、貴方自身はナゼ。

ストッパーなんでしょ。
しっかりしてよ。

駄目なんだよ。
崩壊させたほうがいいダムもあるんだよ。

水底に沈んで美しい景色があるんだよ。
それまでの何もかもを犠牲にしてしまって、
初めて見えてくる景色が其処にあるんだ。

そうだよね。

流れ出すのは石油だロウね。
そうして何もかも、今までの何もかもも、これからの何もかもも、無関係の何もかもも、燃やし尽くして後には何も。

残らないのだロウね。

悲惨だよね。