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恋ひしからざる
救いようがなく、独り。
救いようがなく、独りとなりまして、いま。
貴方のことを最早、夢にすら見なくなりました、久しく。
願おうと、念じようと、記憶というのは時に正直で、あの刹那刹那が、もう薄くぼんやりと古ぼけてしまって、例えば今、意識にのぼらせようと試みたところで、靄のかかったように、曖昧に。
貴方の肌の色ばかりが浮かんだり、瞳の一点ばかりが、その曖昧の中にキンと、焦点を搾ったように、目覚めたり。
それは少し切なく。
何か胸を、内側から重く圧すように、静かで穏やかな、慟哭が。
思い出すことなど、少しずつ、少しずつ減っていって。
痛みは、消えて。
ただ穏やかに、心の波面はひたすら凪の様。
貴方からのお返事は、未だ受け取らずにおります。
あの頃はいつも、家に着くたび息止めて郵便受けを開き、何もなければ虚しく木の板を撫でて、皮膚で確認を。まるで何物か目に入らないものでも確かめるように、箱の底に触れて。
その場所からすらも離れて、貴方の思いも寄らぬ遠い所まで、遠ざかりました。
最早そんな莫迦はいたしません。
いいえ、いたしません。
何故ならば私はもうただ独り、誰にも邪魔をされずに、誰にも否定をされずに、どうにでも理由を付けて、しまえますから。貴方のことならば、どうとでも。
否定は容易いことに思えます。
一言でも懸念を唱えられたらば、私の負けです。
けれども私はそのような心配もなく、独り。
貴方もきっと待っておられる。
何か間違いでもあって、私の書いたあの手紙は、受け取られていないのに違いない。
お返事が来ないのも、それならば当然で。
貴方もきっと、同じほどの苦痛を抱いておられる。
誰も否定はいたしませぬから。
救いようがなく、独りとなりました。
駄目です、駄目です、いくらそうして自分を慰めてみたところで、所詮まがいものの信頼なのです。
駄目、やはり駄目、どのように時が過ぎて貴方の辛い仕打ちを都合よく忘れようとしたところで、駄目なのです。
疑問を偽ることなどできなくて、私の思う一番酷い現実よりもまだ酷い真実のあることを私は忘れることはできなくて、誰が否定をしようともしまいとも、それは確かに貴方と私の間に存在するのです、行く手を阻むのです。視界を塞ぐのです。
救いようがなく、独りとなりました。
貴方と共に真実が遠ざかるのを感じます。
そう、遠ざかるのに、真実の貴方は遠ざかるのに、私の中にはまがいものの貴方が、いるのです。
貴方が遠ざかれば遠ざかるほどに、まがいものの貴方は、私の心に、ぴたりと、重なるのです。
貴方、私のことを、ちゃんと好いていてくださいましたか。
私と同じほどに、疑問を胸に満たしたことが、おありでしたか。
私のことを、今でも貴方の中に、残してくださって、おいででしょうか。
それはとても苦しい、とても悲しい、過去として。
[2001/12/1 (Sat)]
2007.10.06.14:40 |